節税売りとは
タイトルに節税売り、損出し、タックスロスセリングなどいろいろ書きましたが、これらは全部基本的に同じことを指しているのでこの記事では今後は節税売りで行きます。
節税売りをざっくりとした説明をすると、売買をしている株の1年間の損益を±0に近づけることです。
この時、利益が出ている場合に含み損を抱えている株を売却すること、損失が出ている場合に含み益を抱えている株を売却することを節税売りと言います。
この節税売りの目的は株の売却益にかかるおよそ20%の税金を利益を少なくすることで抑えるということです。
例えば1年間で10万円の利益が出ていて、含み損5万円の株を持っている場合に税金はその年の利益にかかるので、利益の20%の約2万円が税金で消えてしまいます。
しかし、同じ口座にある含み損5万円の株を売却して利益を5万円にすると利益の5万円に税金がかかるので5万円の20%の約1万円になります。
もしこれが節税売りをせずに1年目に10万円の利益、2年目に5万円の損失となった場合は1年目に税金は2万円、2年目に税金は0円となり節税売りをしなかった時と比べ1万円も税金を多く払うので損することになってしまいます。
節税売りのメリット
節税売りにはこんなメリットがあります。
- 支払う税金が少なくて済む
- 損切りが躊躇なくできる
支払う税金が少なくて済む
当然ですが、節税を目的としているのでちゃんとやれば税金を少なくすることができます。
投資の基本は払う必要のないお金を払わない事ですし、無駄なお金を払わないで投資資金を守ることは非常に重要ですね。
損切りが躊躇なくできる
税金が少なくなるメリットのほかに損切りが躊躇なくできるというメリットもあります。
節税売りは含み損を抱えている株を売ることになるので必然塩漬けになっている本来損切りした方が良い株が売却の対象になりやすくなります。
自分が買った金額よりも下で損失を確定するのがもったいない程度のたいした理由もなく持っている株は節税売りのタイミングで売却しましょう。
もちろん節税売りをしたからと言ってその株を買い戻してはいけないわけではありませんが、一度損失を確定して冷静になってみるとほかにいい株が見つかるかもしれません。
また、逆に考えると損切りをしてから含み益のある株を売却することで損益を調整するれば要らない株が自分のポートフォリオから消えて節税もできるので良いかもしれませんね。
節税売りのデメリット
節税売りにはこんなデメリットがあります。
- 同時期に同じ銘柄で同じ価格の売買すると不公正取引に当たる可能性がある
- ちょうどよく含み損を抱える銘柄がないと実行できない
- NISAだと損益通算できない
同時期に同じ銘柄で同じ価格の売買すると不公正取引に当たる可能性がある
カブコム証券のところに不公正取引に関する説明があったので引用します。
(1)仮装売買
特定の株式等の売買状況に関し、第三者に誤解を生じさせる目的をもって、同一人物が、同時期に、同価格で、買いと売りの注文を行う権利の移転を目的としない取引。
具体例
https://kabu.com/sp/rule/unfair.html#anc03
- 同価格の売買注文により直近公表価格より価格を上昇又は下降させた。
- 信用買建と現物売付け注文を同時期に同価格で注文した。
- 他の証券会社との間で買い注文と売り注文を同時期に同価格で注文した。
要するに同じ人が同じ時間に価格が同じ注文を出して出来高だけ増やすのはだめってことですね。
節税売りの場合は第三者に誤解を生じさせる目的をもっての部分には当てはまっていないと思いますが、そこを判断するのは自分ではないので難しいところです。
これを避けるためには
- 次の日に注文を入れる(時間をずらす)
- 売りと買いの注文の価格を変える(価格をずらす)
- そもそも買い戻さない
となります。
ちなみに家族などの別名義で同じ時間同じ価格で取引をしたりするのも(2)馴合売買に当たるためできません。
まあ無難に行くなら次の日に買い戻すとか買いの注文は1円下げとくとかですね。
まあ一度売った株なんてもはや他の株と全く同じなのでわざわざ固執して買い戻す必要なんてないんですが…
ちょうどよく含み損を抱える株がないと実行できない
一番上の例で10万円の利益があって5万円の含み損の株を売却していましたが、これではまだまだもったいないです。
僕はSBI証券と松井証券の2つの証券会社で個別株を保有していますが、SBI証券の今年の売買損益は350円、松井証券の今年の売買損益は304円となっています。
つまりSBI証券のほうで払う税金は70円、松井証券のほうは61円ですね。
なぜここまで0に近づけることができたかと言うと広く分散した投資をしていることによって含み損を抱えた株がたくさんあるからです。
先ほどの例では含み損5万円の株しか持っていませんでしたが、もしこれが含み損1万円、4万円、5万円と3つの株で持っていたらどうでしょう?
全部の株を損切りして損益を0にすることができて税金を抑えられますね。
ただ、これがもしこれが含み損11万円、5万円と2つの株で持っていたらどうでしょう?
11万円の株を売って税金を0にする代わりに節税力を1万円分失うか、5万円の株を売って税金で1万円失うかを選択しないといけません。
リスク分散や優待の関係もありますが、このようなことにならないためにも個別株は分散して保有することをオススメします。
ちなみにこの場合は節税力を残して5万円の株を売る方が良いと思います。
NISAだと損益通算できない
最近新NISAの概要が発表されて何かと話題です。
確かにNISAでは利益に税金がかかりませんが、損失が出た場合でも、他の株と損益通算をして節税売りをすることができません。
これは特定口座とNISA口座で別の口座だからと言うわけではなくNISAとはそもそもそういうものなのでしょうがないのです。
まあ基本的にはNISAは長期投資で売らないことを前提に株選びをすることになると思うのであまり関係ないかもしれませんが、間違って売ったりしないように気を付けましょう。
節税売りやった方が良いの?
絶対にやった方が良いです。
少なくとも今の日本では、税金を払うことは自分も社会も貧しくなる最低の行為です。
もちろん脱税すると追徴課税で人生が詰んでしまうので脱税はだめですが、合法的な節税をすることは自分のためにも社会のためにもなります。
そもそもちょっとした手間で資産を守ることができるのだからやらない理由はありません。
こういったことを疎かにする人は何をやってもだめです。
重要なことは何かを見極められるようになりましょう。
また、含み損を抱える株を損切りする機会はあった方が良いです。
もちろん要らないと思ったタイミングで損切りできることが一番ですが、人間なかなかそうもいきません。
年に1回むしろ損切りしたくなる機会を持っておくことはとても大切でしょう。
もちろん損切りできるような株を全く持っていない場合はできなくて仕方がないですが、広く分散した投資をして含み損を抱えている株を全く持っていないという状況はまず考えられないのでできる場合は必ずやるようにしましょう。
節税売りの注意点
節税売りは言ってしまえばただ持っている株を売るだけなのですが気を付けておきたい注意点がいくつかあります。
- 売った株を買い戻したい場合は不公平取引にならないようにしよう
- 1年の特定口座損益は微プラスにしよう
- 株式売買受渡日に注意しよう
- 配当金や株主優待の権利日に注意しよう
- 損益がマイナスの場合は利確しよう
売った株を買い戻したい場合は不公平取引にならないようにしよう
上の方でデメリットにも書きましたが、同時期同価格で売りと買いの注文をすると不公平取引になる可能性があります。(不公正取引は犯罪行為です)
売った株をどうしても買い戻したい場合は注意しておきましょう。
個人的なオススメは売った株に固執せずに別の今有望だと思える株を買うことですが、どうしても買い戻したい場合は注文価格を変えたり、後日買い戻すようにしましょう。
株式売買受渡日に注意しよう
節税売りは基本的になんとなく特定口座の損益が確定してくる年末にやることになります。
受渡日についての理解が甘いと12月のうちに取引を終わらせたつもりでも実際の受渡日的には1月に入ってしまっていて高い税金を払うことになってしまったり節税力を失ってしまったりするかもしれません。
基本的に株は買ってから実際に保有していることになるまでに3営業日かかります。
例えば12/31に売ったとしてもその取引は実際には3営業日後の日付として処理されるので1月の取引と言うことになってしまいます。
1月の取引として扱われてしまっては今年の損益の計算に入りませんから節税売りは失敗です。
節税売りをする場合は株主優待などでよく耳にする権利付き最終日までに済ませておきましょう。
配当金や株主優待の権利日に注意しよう
節税売りは基本的に年末の12月にやりますが、あまり売買をしない人は11月にサクっと終わらせたりもできますし、たくさん売買している人でも12月に大量に売買しなくて良いように前々からやっておいたりすることもできます。
12月以外の月は権利付き最終日を跨いだとしても損益はその1年の中に納まるので節税売り的には何の問題もないですが、権利付き最終日に節税売りを行って株を持っていない場合は当然配当や優待が受け取れないことになります。
配当や優待を目的として持っている株の場合は注意しておきましょう。
権利落ちの日はたいていの場合株価が暴落するのでそこを避けるのは悪いことではないですが…
あと長期優待なんかがある場合、権利付き最終日にその株を持っていない場合は他の日は持っていたとしても長期保有として扱ってくれなくなることがほとんどです。
12月でなくても節税売りの場合、権利付き最終日をまたぐ取引はしない方が無難ですね。
1年の特定口座損益は微プラスにしよう
節税売りは特定口座の損益を0に近づけて利益を減らすことで税金を減らすテクニックです。
この時利益を0年にするのが最も効率が良いですが、利益を減らすために損失まで出してはいけません。
理由は簡単で損失を出すということは翌年に節税できるはずだった金額をみすみすドブに捨てていることと同じだからです。
利益が多すぎると税金が多い、損失を出すと翌年以降の節税力を減ってしまうとなればおのずと利益は出すけれども最小にするが最善策となります。
損益がマイナスの場合は利確しよう
節税売りと言うと基本的には利益が出ている状態で含み損の株を売って損益を調整することですが、損益がマイナスとなっている場合は含み益を持っている株を利確しましょう。
損失がある状態で利益確定をした場合は損失が今回の利益を打ち消してくれるので、その株を実質的に非課税で利益確定することができます。
上のところでも書きましたが、損失を出したまま翌年を迎えることはみすみす非課税で利確できる権利を放棄するという最低の愚行なんですね。
最後のまとめ
今回は、【節税売り】損出しをして税金を取り戻そう(日本版タックスロスセリング)と言うタイトルで特定口座の利益にかかる税金を損切りをして利益をほぼ0にすることで減らすという投資テクニックを解説しました。
節税売りをざっくりとした説明をすると、売買をしている株の1年間の損益を±0に近づけることです。
節税売りのメリットはこんな感じです。
- 支払う税金が少なくて済む
- 損切りが躊躇なくできる
支払う税金を減らしてポートフォリオの足を引っ張っている塩漬け株を処理できるんだからやった方が良いですね。
節税売りのデメリットはこんな感じです。
- 同時期に同じ銘柄で同じ価格の売買すると不公正取引に当たる可能性がある
- ちょうどよく含み損を抱える銘柄がないと実行できない
- NISAだと損益通算できない
不公正取引に該当すると犯罪行為になってしまいます。気を付けていれば全く問題ないですが、何も知らない状態で節税売りをしようとすると同価格で売りと買いの注文を入れてしまう初心者の人もいるかと思うのでしっかりと下調べをしてからやりましょう。
その他含み損を抱えていない場合やNISAの場合は節税売りはできません。NISAの保有株を間違って売らないように注意しましょう。
節税売りをするときの注意点はこんな感じ
- 売った株を買い戻したい場合は不公平取引にならないようにしよう
- 1年の特定口座損益は微プラスにしよう
- 株式売買受渡日に注意しよう
- 配当金や株主優待の権利日に注意しよう
- 損益がマイナスの場合は利確しよう
デメリットのところでも書いてますが、不公正取引は絶対ダメです。
1年間の損益がマイナスだと翌年以降使えたはずの節税力を無駄にすることになります。
今年の税金は今年の取引が対象です。
株は実際に売り買いしてから保有していることになるまでタイムラグがあるので注意しましょう。
権利付き最終日に節税売りをすると配当金や優待がもらえません。
長期優待などの判定もなくなってしまうので優待や配当目的なら権利付き最終日は避けるようにしましょう。
節税売りと言う名前ですが、現在の損益がマイナスの場合は利確しましょう。
損益がマイナスの状態は実質非課税で利益確定できるチャンスです。
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