キノの旅が好き
僕はキノの旅という小説が大好きです。
その中でも、店の話は昔からかなり好きなエピソードなんですが、今思い返してみるとこれは理想のFIRE生活なんじゃないかと思いました。
そんなわけで今回は、キノの旅の好きなエピソードである単行本V巻「店の話」の話をしようと思います。
ちなみに単行本V巻はamazonでも本体価格1円からあるしブックオフとかでも110円で売ってるので気軽に買ってみてください。
ブックオフならクーポンを駆使して実質10円で買えます。
今回の構成としては、あらすじを紹介した後、好きな部分や良いと思った部分について話します。
あらすじはネタバレを含むのでネタバレが気になる人は先に原作を読むなりしてください。
何十年も前の話にネタバレがどうこう言うのもおかしい気がしますが。
一応あらすじは前半と後半に分けるので前半はどんでん返しの前までにします。
キノの旅とは
そもそもの話でキノの旅って何ぞやと言う人もいるかもしれないので軽く説明します。
旅人のキノが相棒でモトラド(モトラート・ドイツ語で二輪車の意味)のエルメスと旅をしながら、様々な国を巡るという短編、1話完結型のファンタジーである。
キノの旅 – Wikipedia
ウィキペディアをそのまま引用してきました。
まあ1文で表すと確かにこんな感じになりますね。
ちなみにアニメも2シリーズ放送されていて最近だと2020年に放送されていました。
基本的に旅人がとある国を訪れて、そこの国にある独特の風習やちょっと変わった人との関わりを楽しむエピソードが多めです。
独特の風習やちょっと変わった人と言うのが、たまにめちゃくちゃ残酷だったりグロかったりしますが、ほっこりする話とかも含まれているので一度読んでみるのをオススメします。
似たタイプで言うと「世にも奇妙な物語」みたいな感じですかね。
僕の他に好きなオススメの話としては4巻「仕事をしなくてもいい国」8巻「愛のある話」12巻「徳を積む国」とかですね。
また今度この話についても書きたいと思います。
店の話あらすじ(前半)
上の説明でなんとなく雰囲気がつかめたかはわかりませんが、「店の話」のあらすじを書いていきます。
舞台は広大な草原にポツンと佇む小さなお店。
今回の主役は旅人ではなくこのお店の店主。(旅人が主役じゃない話は片手で数えられる程度しかない珍しい話です)
話は店主が開店から3094日欠かさず書いている日誌から始まる。
日誌とは言え、周囲には草原が広がっていて人などめったに来ない店なので、「今日も誰もお客さんは来なかった。」の一文の後にその日行ったことを書く日々が続く。
その内容は、以前来た客からもらったカボチャの種を使って農耕をしたり、本を読んだり、洗濯をしたり、商品の点検をしたり、釣りをしたり、料理をしたり、発電機を直したりするなどの生活を綴る本当に何気ない日常となっている。
3102日目にようやくキノ(シリーズ主人公)が店に来店する(正確にはエンジン音を聞いた店主が大声で呼び止めた)ことで本題が始まる。
店主がお茶を出して商品の話をしようとするが、まずキノに店についての質問をされる。
こんな場所で店をやる理由、客は来るのか?今までに何か売れたか?などひとしきり話した後ようやく商品の説明になり、店主は自慢の商品「五号」を見せる。
キノは五号をひとしきり触ってから「これは何ですか?」と尋ねると店主は「何に見えるでしょうか?」と逆に質問し返す。
エルメスはスーツケースだと答え、同時にバックルがないがスイッチがあると指摘する。
その指摘を受け、店主は商品が実際は”何か”を説明する。「そうです。スーツケースのように見えます。見えるように作ってあります。でも、でも本当は違います。本当はーーー」
店の話あらすじ(後半ネタバレあり)
ここからネタバレと言うか、どんでん返しのキモの部分に触れるので自分で楽しみたい人はブラウザバックしてください。
読み終わってから戻ってきてもらえると非常にうれしいです。
まあ上の方でも書いたけど何十年も前の作品にネタバレもクソもあるのかって感じですが。
あとこのエピソードはPS2のゲームにも収録されていたらしく、ニコニコ動画にプレイ動画が上がっていました。
このゲームだと店主のCVは若本さんなんですね。
独特の世界観に若本節がかなり効いていて一層この話が好きになりました。
この動画見てから戻ってきてもいいかもしれませんね。
それなりにあらすじ(前半)から空間も空けたのでそろそろあらすじに戻ります。
「そうです。スーツケースのように見えます。見えるように作ってあります。でも、でも本当は違います。本当はーーー」
あまりじらすとお客さんはもういいよと言って帰ってしまうから、ほんの少しだけじらして
「超強力爆弾なんです」
と答えた。
ここで、広大な草原でやっていたお店は超強力爆弾専門店だったことが明かされる。
この後、この超強力爆弾についての説明と作った故郷での話が続く。
ここで好きなセリフが入るので引用して後で解説します。
「これを自分で使ってみようとは、思わなかったんですか?」
キノさんが聞いた。
「思いませんでした。壊したい国も、殺したい人もいませんし、私は私が作りたいと思ったものを作ることができただけでとても満足です。作りたい人が作って、使いたい人が使うことは、とても自然なことだと思います。使いたい人が、購入してくれて使ってくれれば、作った方としてはとても満足できます。」
私は答えた。いつ誰に聞かれても、私はそう答えるように答えた。
キノの旅V巻 店の話
ひとしきり商品説明が終わると今度はセールストークに移っていく。
本に書かれていたテクニックを駆使して超強力爆弾をキノに売り込むが、必要ないので購入できないと言われてしまう。
ここでも好きなセリフが入るので引用して後で解説します。
私はそれを聞いて、もちろん残念だった。
しかし、誰か欲しい人が買ってくれるのが一番いいことで、欲しくない人が買わないことはとても自然なことだった。
キノの旅V巻 店の話
その後、超強力爆弾は購入できないが食料品などがあれば交換したいと言うキノに食料や水を無料であげて、一緒に食事をしてから送り出した。
翌日からまた店の整理や料理をする日常に戻っていく。
終。
よいところ
理想的なFIRE生活
この話にはFIREをした人が2人でてきます。
登場人物も2人と1台しかいないので当たり前ですが、店主とキノさんです。
キノさんは他のタイミングで語るとして今回は店主にスポットを当てます。
店主は文字通り店の主ですが、店の収入はなく釣りや農耕をして完全に自立して一人で暮らしています。
食料の調達だけでなく、料理や洗濯、商品作成、道具の修理、店の建設など一人でできることは何でも自分でやっています。
そして余った時間では読書をして過ごすんだから立派すぎるほどのFIREの民です。
また、周りに国がないので当然ですが、お金の心配もありません。
話を読む限りでは、店は自分で建設しているし、牛や魚も手に入る環境で農耕をしているし、発電機を使って電気も自分で用意しています。
衣食住に困らない能力を持っているから将来の不安なんてものもなさそうです。
こんな強靭すぎるほどのバイタリティを手に入れて文字通りの晴耕雨読の生活をしてみたいものですね。
需要と供給の考え方
あらすじで引用したセリフともうひとつあらすじに入れなかったけれど好きなセリフがあるのでそれも含めて3つ引用します。
作りたい人が作って、使いたい人が使うことは、とても自然なことだと思います。使いたい人が、購入してくれて使ってくれれば、作った方としてはとても満足できます。
誰か欲しい人が買ってくれるのが一番いいことで、欲しくない人が買わないことはとても自然なことだった。
商品が売れなかったことは残念だけれど、それはお客さんの都合だから仕方がないことだ。お客さんが来てくれたことだけでも嬉しかった。
キノの旅V巻 店の話
どれも店主のクリエイターとしての素晴らしい考え方がにじみ出ているセリフですね。
僕自身もクリエイター(プログラマー)ですが、自分の作るものにはあまり愛着がありませんしポリシーもありません。
それもそのはずで現在の社会は
- 嫌々仕事だから生産する人
- 欲しいと思わせて洗脳する人
- 欲しくもないのに洗脳されて買う人
と言う構図になっているからです。
これは金儲けを中心とした悪い需要と供給だと自分は思っています。
自分もそこの一部になっているので何とも言えませんが…
欲しいと思わせて洗脳する人で言うと、例えば以前こんな記事を見かけました。
「タイムラインを無作為に並べ替えたり、フォローしていない人のツイートを挿入したりしてごちゃごちゃにするというのが私たちの業務でした。」
こうしたほうが定着率が良いのでユーザーのためになるという話ですが、まあそんなことは置いといて、勝手にフォローしていない人を見せたり、話題になっているものを見せたりして洗脳することで情報を植え付けたりするということは容易にできるでしょうね。
話をキノの旅のほうに戻して、店主は一貫して超強力爆弾は作りたいから作ったと言っています。
そして、それを欲しい人に買ってもらいたい。欲しくないのであれば残念だが買ってもらえなくていい。という考えです。
この場合、ここには嫌々仕事だから生産する人も欲しいと思わせて洗脳する人も欲しくもないのに洗脳されて買う人も存在しません。
作りたい人が作って、欲しい人が買うだけのシンプルで当たり前の需要と供給の世界になります。
そしてこれこそが金儲けを中心としない良い需要と供給だと自分は思っています。
とは言え現実には世界中がそんな状況に!なんてことは絶対ならないんですけどね。
でも個人単位なら、すでにお金や生活能力が十分にあればなんとかその状態にできます。
嫌々やるような仕事はせず、洗脳してくるものをちゃんと洗脳してきていると理解して遠ざけ、洗脳されずに自分の欲しいものだけ買うという生活ですね。
この生活を手に入れるのが僕の人生の目標です。
最後のまとめ
今回は「【理想の生活】キノの旅「店の話」からFIRE・需要と供給を考える」と言うタイトルでキノの旅の「店の話」を紹介しました。
基本的にはあらすじを紹介した後良かったところを紹介して、この話から感じたFIRE・需要と供給について考えを書いています。
あらすじはまとめてもしょうがないので、上の方を読むかご自身で話を読んでください。
この話で個人的に好きなところの1つ目は登場する2人の生活が理想的なFIRE生活に見えるところです。
キノさんも店主も全く異なる生活をしていますが、どちらも誰にも仕えることなく自分のやりたいことを自由にやって生活しています。
やりたいことをやって生活するだけの能力や時間を手に入れてこんな生活を僕もしてみたいものです。
そして2つ目は店主の需要と供給に対する考え方です。
店主は一貫して商品を作りたいから作ったと言っています。
そして、商品は欲しい人に買ってもらいたい。欲しくないのであれば残念だが買ってもらえなくていい。という考えです。
これは当たり前の需要と供給の話ですが、現代ではこんなにシンプルなことすら捻じ曲げられています。
現代の需要と供給は、嫌々仕事だから生産する人、欲しいと思わせて洗脳する人、欲しくもないのに洗脳されて買う人で構成される地獄絵図です。
自分だけでも嫌々やるような仕事はせず、洗脳してくるものをちゃんと洗脳してきていると理解して遠ざけ、洗脳されずに自分の欲しいものだけ買うという生活をしていきたいものですね。
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